御開山様の遺したもの。

長松院の秋彼岸の日の朝、最後の準備をしていると家内のなにやら興奮した声。


「住職、えらいもんが出てきました!」


何やら騒いでおるのう、どれどれ、何が出てきた?

全く大袈裟な。。。


しかし、出てきたのはまさに大袈裟!!


御開山様の遺された九条袈裟が出てきたのです。

これには私も参りました。

長松院の宝物の一つとして書物にも載ってはいるものの、引越しのどさくさで私が失してしまったのではないか、と思い悩んでいたその袈裟が目の前にあったのです!

経年による劣化は激しく、損傷も甚大ですが、400年前から連綿と受け継がれてきたその歴史の一端にまた触れることができたその興奮、そしてなにより、これまで歴代住職が次の代へと受け継いで来られた長松院の宝物が失われることなく私の手にあり、また次の代へと引き渡す責任がこれで果たせる、という安堵感。


柄も美しく、しばし手を止め二人うっとりとそのお袈裟を半ば放心状態で眺めておりました。

手袋をして広げて写真を撮ったのち、桐の箱に奉書で包んだお袈裟を直しました。

ものがものだけに、展示してみんなに触れ、見ていただくことは不可能ですが、何かの折にはご開帳させていただきたいと思います。