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殿の御帰館。

1904年(明治37年)直政公三百回忌の際に長松院に奉納された寺宝『直政公騎乗之圖』ですが、長らく放置されていたため絵の具の剥離が酷く、護持会に相談して思い切って修復に出しました。

とはいえこの掛軸、あまりにも大きすぎるため規格の木枠では間に合わず、枠からの発注となってしまい、時間がだいぶかかってしまいました。

が。

この度、修復が完成し殿の御帰館と相成りました。

 

 

おかえりなさいませ。

 

紙は一枚ものでツギハギではなく、そのため汚れた部分の修復はできませんがそれもまた歴史の表れ。

今回修復に出したおかげでわかったことに、右にある讃は日下部鳴鶴のもので、この当時東京に暮らしていた日下部にお願いして描いてもらったものであろうこと、また左にある青柳琴僊の名前の下には謹写とあり、この言葉は通常は仏画のみに書かれるもので肖像画には書き入れないもの。すなわちこの絵を描くにあたり琴僊はかなり気合いを入れていたのであろうことが推測される、というのがあります。

 

 

剥離した部分もしっかりと着色され、威風堂々としたお姿に圧倒されてしまいます。

 

 

このまま一週間ほど掛けた後、箱に二、三日しまいこみ、また出して掛けて、をしばらく繰り返すことで着色がよりしっかりし、後々まで風合いが残るとのこと。

檀家さんが寄進くださった桐箱に収納し、次の代へとバトンタッチしていきます。

今なら掛けてありますので、興味ある方はいらしてください。

 

 

何より殿の無事なお姿での御帰館を嬉しく思います。