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RMZCでのお話。

曹洞宗は、大正時代にアメリカに伝えられました。

最初は禪というよりも、日系アメリカ人の憩いの場や心の拠り所としての存在であり、キリスト教を宗教の柱とした人たちにとっては単なる異教であったようですが。

しかし1960年代、俗にいうヒッピー世代の若者たちにカウンターカルチャーの一種として受けいられたのが、曹洞禪。

伝えたのは鈴木俊隆老師であり、乙川弘文老師であり、前角博雄老師。

 

鈴木俊隆老師(1905年 - 1971年)未だ多くのアメリカ禪に影響を与える。アメリカでは鈴木大拙と共に『二人の鈴木』と呼ばれている。

乙川弘文老師(1938年-2002年)鈴木老師に招かれ渡米。スティーブ • ジョブズの恩師として知られる。破戒僧として知られるが、瘋癲な一面は乙川老師の一面のみを表していると言って差し支えなかろう。

前角博雄老師(1931年-1995年) 曹洞宗、臨済宗、三寶教団などに参じ、それぞれ印可を受ける。1956年渡米し、ZCLA、陽光寺、道真寺などをアメリカに創設。徹玄老師は前角老師の一番弟子。

 

ヒッピーカルチャーにおいてフラワームーブメント(戦争反対運動)やコミューンを形成し、規制社会から逸脱して自由に生きる彼らにとって、禪の教えというものは最終解脱して何か違うものに自分を変容し、自由になれる神秘的な手段として魅力的に映ったのでしょう。

実際、何か別のものに変身して未来永劫心静かに暮らせるかというとそんなわけもなく、がっかりして離れていった人たちも少なくなかったようですが、中には禪のなんたるかを掴み、その後も禅僧として、または居士として打坐する人は絶えませんでした。

実際禪を中心に据えた生活をする有名人はセレブにもおります。

10年前に亡くなったスティーブ•ジョブスなどはその一人であることは有名です。

そんな中、禪はZENとしてアメリカ社会に浸透していきます。

 

禪をアメリカに伝えた前角博雄老師の一番弟子は、バーニー徹玄グラスマン老師。

私は機会を得て徹玄老師と知り合い、彼の禅堂『Zen Peacemakers』に学ぶ機会を得ました。

おそらく私は彼にとって最初で最後の日本人としての弟子であり、侍者であったかと思います。

これは本当に僥倖であったと言わざるを得ません。

 

老師方が蒔いた種はアメリカという国に根を下ろし、いくつかのサンガができ、今も活動を止めませんが、その隣の国カナダでは未だ禪の息吹がありません。

私の法友であり、同志(と勝手に思っている)横山行敬師は現在、アメリカ在住の日本人僧侶ですが、カナダでの布教活動も精力的にされています。

その横山師とも、アメリカはZen Peacemakersで知り合ったのですが、彼が現在活動するカナダの禪コミュニティ『Rocky Mountain Zen Center』で、徹玄老師の思い出話などしてもらえないか、との依頼を受けました。

英語で法話などしたこともない私ですが、任にあたって他に譲り難し。

稚拙な英語でも心を込めて喋れば伝わるだろう。

そう開き直って思い切って受けさせていただきました。

 

皆さんとても優しくて、私のわかりにくいであろう英語にもうなづきながら聞いてくださり、質問もたくさんしてくれました。

とても楽しい時間を過ごさせていただきました。

いつの日か、カナダの禅堂にもお邪魔して、法友の皆さんとお話させていただけたら嬉しいです。

ありがとうございました。